神戸山口組との泥沼の分裂劇が始まってから、すでに10年が経過した。かつて市街地で白昼堂々と繰り広げられた銃撃戦は影を潜め、一見すると沈黙が保たれているように見える。だが、この静寂こそが最も不気味であると捜査員たちは口を揃える。実質的なトップ不在とも言える状況下で、すべての決定権を握る男の影は、組織の隅々にまで行き渡っている。
関係者によれば、直参組長たちの高齢化と相次ぐ引退により、ピラミッド型の支配構造は限界に近づきつつある。それでもなお、恐怖と利害で結ばれた統制が維持されているのは、圧倒的なカリスマの存在があるからに他ならない。しかし、その均衡がいつ崩れてもおかしくない危うさを、現在の組織は内包している。