昭和から平成にかけて、関西は日本を代表する個性派建築家を数多く育んできました。その代表格が村野藤吾です。村野は官僚的なモダニズム建築と一線を画し、人間の身体感覚や手仕事の温もりを重視した独自の有機的デザインを展開しました。旧新歌舞伎座(大阪・難波)のなまこ壁と千鳥破風を模したファサードは、伝統とモダニズムを大胆に融合させた奇跡的な造形として語り継がれています。
そして1970年代、獨学で建築を学んだ元プロボクサーの安藤忠雄が登場します。大阪市生野区出身の安藤は、「住吉の長屋」(1976年)で過酷な都市生活の中に自然を取り込む鋭利な試みを行い、建築界に激震を与えました。
- 光の教会(大阪府茨木市): コンクリートの十字架状のスリットから光が差し込む静謐な礼拝堂。
- 兵庫県立美術館(神戸市): 海と都市を結ぶ壮大な階段と打ち放しコンクリートの美。
- 中之島こども本の森(大阪市): 既存の都市公園とシームレスに繋がる知的空間。
安藤の建築に見られる極限まで削ぎ落とされた幾何学と、風や光といった自然エレメントの交差は、京都の枯山水庭園に通底する精神性を現代の素材で再解釈した結果と言えます。