多形滲出性紅斑を取り巻く情報の中には、患者を誤った行動へ導くいくつかの危険な誤解が流布しています。
代表的な誤解が「発熱がないから重症化はしない」という思い込みです。発症の初動段階では平熱のまま四肢に皮疹が広がり、発症後数日を経てから急激に38度以上の高熱と粘膜病変が噴出するタイムラグが存在します。熱がないことは決して安全宣言にはなりません。
また、「皮膚科に行けば塗り薬1本ですぐに治る」という過小評価も禁物です。確定診断を下すためには、視診だけでなく血液検査(炎症反応CRP、白血球分画、肝腎機能、ウイルス抗体価、マイコプラズマ抗体等)を行い、全身状態への波及度合いを科学的に評価する必要があります。非典型的な病変の場合、局所麻酔下で皮膚組織の一部を採取する「皮膚生検(病理組織検査)」を行い、血管炎や表皮細胞の壊死状態を確認して初めて確定診断に至るケースも少なくありません。