藤井道人監督が描いた魂の映画『ヤクザと家族 The Family』において、綾野は一人の男の1999年から2019年に渡る20年間の軌跡を見事に演じ切った。若き日のチンピラ時代から組の幹部、そして社会から疎外された晩年まで、それぞれの時代における血肉の通った存在感は、過酷な肉体改造なしには成立し得なかった。
この重厚なヒューマンドラマにおいて、彼は暴力の渦中に身を投じる青年の尖った若々しさを研ぎ澄まされた肉体で体現し、やがて時代の波に呑まれていく切なさを、衰えゆく背中で語ってみせた。役作りのために自身の体を極限まで追い込む姿勢が、作品に類稀なるリアリティを与えたのは紛れもない事実である。