ニュース速報で「都内で殺人事件発生」の文字が流れた際、世間が最も注視するのは「一体なぜ事件が起きたのか」という犯行動機の経緯です。警視庁刑事部が取り扱う捜査資料や公判廷の審理を紐解くと、都内で発生する殺人事件は大きく2つの類型に二極化している実態が浮かび上がります。
1つは、夫婦、親子、交際相手、あるいは職場やビジネス上の知人間で蓄積された怨恨が爆発する「関係破綻型」です。足立区や練馬区などの住宅街、あるいは港区や新宿区のプライベート空間で発生する事案の多くは、外部からは窺い知れない濃密な人間関係の歪みが引き金となっています。公判で読み上げられる供述調書には、「逃げ場のない借金トラブル」「長年の介護疲れによる精神的孤立」「別れ話を巡る執着とストーカー心理」といった生々しい経緯が克明に記されています。当事者間での心理的バウンダリー(境界線)が崩壊し、衝動的な激情に駆られて凶器を手にしてしまうケースは後を絶ちません。
もう1つが、近年の首都圏を脅かす「組織的・無差別型」の凶悪事件です。SNS上のいわゆる「闇バイト」を通じて募集された面識のない実行犯が、指示役の遠隔操作によって一般住宅や店舗へ押し入る強盗殺人・同致死事件がこれに該当します。犯行現場となった場所では、結束バンドでの拘束や鈍器を用いた執拗な暴行など、従来の侵入窃盗の枠組みを逸脱した残酷な手口が確認されています。関係者の証言によると、実行犯の多くは目先の報酬に釣られて犯罪グループに身元を把握され、「途中で抜け出せなくなって犯行に及んだ」と法廷で涙ながらに述懐しますが、司法の場ではその短絡的な動機に対して極めて重い刑事責任が追及されています。