エンジンマウントは、金属製のブラケットの間に特殊な合成ゴムや減衰オイルを封入した構造を持つ。数百キログラムに及ぶ重量物を支えつつ、ピストンの往復運動による強烈な振動を熱エネルギーとして吸収・遮断する過酷な役割を担っている。このゴム組織が硬化・断裂した際に現れる初期兆候には、明確なパターンが存在する。
もっとも典型的なサインが、アイドリング時の車体振動と異音だ。赤信号などで停車中、ギアを「D(ドライブ)」レンジに入れたままブレーキを踏んでいる際、ダッシュボードやルームミラーが目に見えて震える、あるいはシートの座面を通じてお尻に細かなバイブレーションが伝わる場合、マウントの減衰能力は限界を迎えている。ギアを「N(ニュートラル)」に入れると振動がフッと軽減する現象は、エンジンマウント劣化の動かぬ証拠といえる。
さらに劣化が進行すると、加減速時や段差通過時に「ゴトッ」「コトコト」という鈍い打音が発生する。ゴムが完全に裂け、内部の芯金同士が直接接触することで、ボディ骨格へ衝撃がダイレクトに伝達されるためだ。エンジンマウント寿命と走行距離の目安としては、使用開始から7〜10年、走行距離7万〜10万km前後が一般的な交換インターバルとなる。シビアコンディション(短距離走行の繰り返しやアイドリング時間の長さ)に該当する車両では、5万kmを超えたあたりから急速に硬化が進むケースも確認されている。