行事の熱気の中で忘れがたいのが、境内に漂う芳醇な香りだ。節分祭の期間中、境内や周辺には多数の屋台が立ち並ぶ。香川名物のうどんはもちろん、温かい甘酒やぜんざいが振る舞われ、参拝客の冷えた体を芯から温める。
近年では、吉方を向いて無言で丸かぶりする「恵方巻」の特設販売も行われ、境内は食の愉しみにも満ちている。
龍神が眠る深淵:奥の宮・定深池の祈り
賑やかな喧騒から少し離れ、奥の宮へ向かうと空気は一変する。田村神社の奥の宮には、開けてはならないとされた井戸(定深池)がある。古来、この池には龍神が住み着いており、覗き込んだ者は命を落とすという厳格な禁忌が伝えられてきた。
節分の日にこの奥の宮へ参拝することは、水の恵みへの感謝と、深層に眠る強い霊力から加護を得ることを意味している。賑やかな豆まきと静寂な水神信仰。この対比こそが田村神社という聖地の魅力だ。