日本の地図表現における驚異的な精緻さは、いかにして築かれたのか。その原点に立つのが、江戸後期に17年をかけて全国を測量した伊能忠敬である。50歳を過ぎてから本格的に天文学と測量術を修め、歩幅を均一に保ちながら日本全国の海岸線を歩き通した彼の業績は、現代の人工衛星測量と比較しても誤差が極小という圧倒的な精度を誇る。
この伊能隊の知られざるドラマを描いた映画『大河への道』が注目を集めたように、地図作りは単なる記録作業ではなく、国家の防衛と自立をかけた壮絶なプロジェクトだった。NHKオンデマンドで配信されている数々の地理・歴史ドキュメンタリーでも、忠敬が残した『大日本沿海輿地全図』がいかに当時の西洋列強を驚嘆させたかが克明に語られている。地球の丸さを測るためにひたすら歩き続けた男の執念は、日本の地図技術を支える不滅の原点として今も息づいている。