国は介護職員の賃金引き上げを目指し、介護報酬改定ごとに「介護職員処遇改善加算」をはじめとする様々な加算措置を講じてきました。2026年度の改定を経て加算の一本化が進められるなど、介護職の処遇改善手当の効果により、現場の平均給与水準は着実に底上げされています。常勤介護職員の平均月給は手当を含めて31万円〜33万円前後に達し、かつてのような「手取り十数万円のワーキングプア」という状況からは脱しつつあります。
しかし、現場スタッフの不満が完全に解消されたわけではありません。そこには制度設計上のジレンマが存在します。
- 事業所ごとの配分格差:加算で得た原資をどのようにスタッフへ分配するかは各法人の裁量に委ねられているため、「勤続年数の長いリーダー層だけに手厚く配分され、一般職員には数千円しか還元されない」といった不公平感が生まれやすい。
- 手当偏重による基本給の据え置き:基本給ではなく「変動しやすい一時金や手当」として支給されるケースが多く、ボーナスの算定基礎や将来の退職金に反映されにくい。
- 事務作業・書類負担の増大:加算を算定するために必要な計画書や実績報告、研修記録の作成といった膨大なペーパーワークが中間管理職やサービス提供責任者にのしかかり、現場業務を圧迫している。
給料が数万円増えたとしても、それ以上に業務負荷や責任が増加し、職場の心理的安全性が損なわれていれば、スタッフの離職を食い止める決定打にはなり得ないのが介護現場の実像です。