公示日の朝、選挙管理委員会が指定する特設会場では、独特の張り詰めた空気が漂います。午前8時30分、候補者届出の手続きが一斉に始まります。事前審査を終えた書類を手に各陣営の代理人が並び、ポスター掲示板の番号を決める「届出順を決めるくじ引き」が行われます。この抽選結果が確定した瞬間、事務所に待機する電話番から現場部隊へ一斉に連絡が飛び交います。
届出が受理されると、陣営には選挙管理委員会から「選挙運動用自動車・船舶表示板」「街頭演説用標旗(通称・マイク標旗)」「選挙運動員用腕章」などのいわゆる“三種の神器”が交付されます。これを受け取るまでは、いかなる候補者も公に名前を連呼したり政策ビラを配ったりすることはできません。現場の陣営関係者が「朝の15分間が生死を分ける」と語る通り、交付を受けた瞬間に街頭演説と選挙カーの運行が正式にスタートします。
同時に繰り広げられるのが、ポスター掲示場のルールに基づく壮絶な陣地争いです。有権者の目に留まりやすい区画へ瞬時にポスターを貼るため、広大な選挙区内に数百〜数千カ所設置された公営掲示場へ、何十組ものボランティア部隊が一斉に散っていきます。雨天時や猛暑下でも1枚ずつ画鋲や両面テープで正確に貼り付ける作業は、まさに各陣営の組織力と草の根の動員力を測るバロメーターとなっています。