「なぜ、これほど高貴な霊獣が童守町のような一地方都市に降り立ったのか」――作中では、5年3組の生徒たちが「自分の中に将来の世界的な指導者や聖人になる才能があるのではないか」と色めき立つ場面がコミカルに描かれます。
しかし、麒麟が目指していた場所は小学校ではありませんでした。麒麟が向かった先は、町の小さな産婦人科医院。そこには、未熟児として生まれ、生命の危機に瀕していた名もなき赤ん坊がいました。
麒麟が地上へ降臨した真の目的は、町を破壊することでも、名声ある誰かを称えることでもなく、失われかけていた小さな新しい命をその神聖な力で祝福し、救い出すことだったのです。赤ん坊に命の光を灯した麒麟は、静かに天空へと帰還していきました。
偉人や英雄だからではなく、すべての命そのものが等しく尊いという真理を突きつける結末は、単なるバトル展開に終わらない本作屈指のヒューマニズムと感動を読者の心に刻み込みました。