ドラマ『HOTEL』を語る上で欠かせないのが、主人公・赤川一平(高嶋政伸)が物語の節目ごとに語りかける「姉さん、事件です」という印象深いナレーションです。コミカルな日常トラブルからシリアスな人間模様まで、すべてのエピソードの幕開けや転換点を象徴する名フレーズとして、当時の流行語にもなりました。
本作の原点は、漫画の王様と称される石ノ森章太郎の同名コミック『HOTEL』(小学館『ビッグコミック』連載)です。原作は巨大高級ホテル「東京プラトン」を舞台に、支配人やベルボーイ、フロント、宿泊客が織りなす大人のヒューマンドラマを描いた本格群像劇でした。
ドラマ化にあたり、新入ホテルマン・赤川一平の成長ストーリーへと軸足を移したことで、一平が亡き父の面影や仕事の苦悩を語りかける「姉さん」への独白形式が採用されました。この演出によって、視聴者は一平の目線に深く感情移入し、ホテルという非日常のステージで繰り広げられるドラマをリアルに体感することができたのです。