この潮流の決定打となったのが、イラストレーターのナガノが手掛ける「ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ」であることは疑いようがない。可愛らしい見た目とは裏腹に、厳しい労働環境や過酷な討伐任務、突如として訪れる理不尽な試練など、ハードボイルドな世界観が読者を戦慄させ、同時に熱狂させた。読者が抱いたのは、単なる「カワイイ」という感情ではなく、危険と隣り合わせの生活を送る彼らを見守らざるを得ないという、強烈な当事者意識だった。
その感情のフックをさらに極端な「報われなさ」へと振り切ったのが、気鋭のクリエイター・可哀想にが生み出した「おぱんちゅうさぎ」だ。健気に他人のために尽くすものの、ことごとく裏目に出て泣き濡れるその姿は、SNS上で爆発的なミームとなった。「可哀想だけど愛おしい」「報われない姿が自分に似ていて胸が締め付けられる」という倒錯した共感は、ネット空間の枠を飛び越え、あらゆる商業施設をピンク色に染め上げている。