毎朝8時15分、校内に心地よい静寂が訪れる。池袋の繁華街からほど近い校舎の中とは到底思えない無音の空間。全校生徒が一斉に針と糸を持ち、無心で布に糸を通していく。同校の象徴でもある「運針(うんしん)」の時間だ。
わずか5分間。しかし、この短時間の積み重ねが生徒たちの精神面に与える影響は計り知れない。指先に全神経を集中させ、雑念を払う。一目一目を刻む作業は、めまぐるしく動く現代社会において自らの心と向き合う貴重なリセットタイムとなっている。ある卒業生は「試験直前の極限状態でも、運針で培った集中力のスイッチを入れれば冷静になれた」と振り返る。時代がどれほどデジタル化しようとも、手作業を通じた内省の時間は生徒たちの揺るぎない軸となっている。