絵に本物らしい「説得力」を吹き込む鍵は、やはり美術解剖学の理解にある。医療目的の解剖学とは異なり、美術解剖学は外見のフォルムや陰影に影響を与える骨と筋肉の連動メカニズムに特化した分野だ。例えば肩周りのダイナミズムを観察すると、腕を上げた際に鎖骨が連動して持ち上がり、肩甲骨が背中で柔軟にスライドしていると分かる。
こうした体内の連動を無視して描くと、腕を上げたときに肩の関節だけが奇妙に引っ張られた不自然な絵になってしまう。鎖骨・肩甲骨・上腕骨の3パーツが三位一体となって機能する構造を頭に入れるだけで、ポーズの説得力は段違いになる。一見難解に思える解剖学も、「皮膚の表面に現れる目印」に絞って観察すれば、作画の強力な味方となる。