港に滑り込んできたのは、旧来のディープなディーゼル音を響かせる船ではない。静けさとともに滑るように着岸したその船体こそ、今年から本格就航を果たした大容量バッテリー搭載のEVハイブリッドフェリーだ。船体が岸壁に固定されると同時に、超高速急速充電アームがドッキングし、わずか15分間の下船作業の合間に次回航行に必要な電力をチャージする。
「音も揺れも旧型とは比べものにならないほど静かです」。熊本からの通勤で連日利用するというエンジニアの男性はそう話す。甲板に立ったときに感じる潮風には、かつてのような重油煙の匂いは一切ない。過酷な有明海の潮流を克服しつつ脱炭素を両立させたこの技術革新は、全国の離島・沿岸航路が直面する課題に対する一つの明確な解答と言えるだろう。