1990年代末から2000年代初頭にかけて、写真週刊誌やワイドショーはこぞって「浜崎あゆみと安室奈美恵の確執」「エイベックス社内における派閥争い」を報じました。楽屋が離されていたことや音楽番組のひな壇での座り位置、エイベックスの野外フェス「a-nation」でのトリ争いなど、細かな動向がすべて対立の文脈で消費された歴史があります。
しかし、当時のレコード会社関係者やチーフディレクターの証言を検証すると、不仲説の主たる要因は「レーベル側のマーケティング戦略」と「メディアによる対比構造の商業利用」であったことが浮き彫りになります。
安室奈美恵は小室哲哉プロデュースから離脱後、自らの音楽的ルーツであるR&Bやヒップホップへと舵を切り、ストイックなダンスボーカルスタイルを追求していました。対して浜崎あゆみは、自ら全曲の作詞を手掛け、孤独や苦悩を赤裸々に綴るロック・ポップスサウンドで大衆の共感を獲得していきました。
同じエイベックス系に所属しながら、ターゲット層も音楽性も意図的に棲み分けが図られていたにもかかわらず、メディアは「先行する女王・安室」と「猛追する新女王・浜崎」という分かりやすい二項対立のドラマを仕立て上げたのです。現場スタッフの間でも互いの制作現場への配慮は徹底されていたものの、当人同士がプライベートで激突したり敵対行動を取ったりした事実は一度も確認されていません。