蚊の生存期間が延びることは、単なる生活上のストレスにとどまらず、公衆衛生上の重大なリスクに直結する。世界保健機関(WHO)は、地球規模の気温上昇に伴い、蚊媒介感染症の流行地域が温帯域へと急速に拡大していると警鐘を鳴らし続けている。
日本国内でも、国立感染症研究所や厚生労働省が監視体制を強化しているのが、ヒトスジシマカなどが媒介するデング熱やチクングニア熱、ジカウイルス感染症である。蚊が病原体を持つ人間を吸血してから、体内でウイルスが増殖して他人に感染させられる状態になるまでには一定の日数(潜伏期間)を要する。つまり、蚊の寿命が長く保たれる環境ほど、ウイルスを媒介可能な危険な成虫が生き残る確率が跳ね上がる。都市部のヒートアイランド現象によって蚊の活動可能期間が春先から晩秋まで長期化している現在、感染症リスクへの警戒はかつてなく高まっている。