本作の根幹を成すのが、魔法の筆から放たれる「ペイント(青)」と「イレーサー / シンナー(緑)」の使い分けです。この2つの液体は、単なる武器や足場作りの道具にとどまらず、プレイヤー自身の倫理観とミッキーマウスの行動原理を試すパラメーターとして機能しています。
ペイントは、消えかかった足場や建物を描き直して世界を修復し、敵対するブロットリングたちを「友好的な仲間」へと浄化します。一方のイレーサーは、障害物や敵を溶かして瞬時に消滅させる破壊の力を持ちます。戦闘においてはイレーサーの方が手っ取り早く敵を殲滅できる場面が多いものの、イレーサーを多用して敵を消し去り続けると、周囲の住人(トゥーン)からの信頼を失い、街の景観が崩壊したまま物語が進むという代償を背負うことになります。
物語の背景にあるのは、ディズニー初の公式キャラクターでありながら版権問題によって長年歴史の影に追いやられていたオズワルド・ザ・ラッキー・ラビットの悲哀と、意図せず世界を壊してしまったミッキーの「贖罪」です。心理学的な観点から見れば、本作は「過去の過ちをどのように修復するか(ペイント)」という成長の旅路であると同時に、「効率のために他者を切り捨てるか(イレーサー)」という葛藤をプレイヤーに追体験させる巧みな構造を持っています。