医療現場でHDS-Rと並んで頻繁に用いられるのが、世界的な標準指標である「MMSE(ミニメンタルステート検査)」です。両者はよく似ていますが、検査の設計思想や得意分野には明確な違いがあります。
最大の違いは「動作性・視空間認知のテストが含まれているかどうか」です。MMSEには、文を読ませて指示通りに行動させる課題や、紙に書かれた重なり合う五角形を模写する図形課題、文章を書く課題が含まれています。これにより、脳梗塞の後遺症やレビー小体型認知症に見られる視空間認知障害を捉えやすい特徴があります。
一方、HDS-Rは筆記用具を一切使わず、完全な対話形式で進められます。麻痺で手が動かない患者や白内障等で視力が低下している高齢者でも正確に受検でき、言葉の想起や記憶力の深掘りに強みを持っています。
日本の病院では、初診時のスクリーニングには侵襲性が低く記憶障害を鋭敏に検出できるHDS-Rを使い、国際治験や詳細な病態把握、身体症状が疑われる場合にはMMSEを選択するといった使い分けが一般化しています。