財前と激しく対立する内科医・里見脩二を演じた松山ケンイチの存在感も、本作の大きな柱だ。権力や自己保身には目もくれず、目の前の患者と真実だけに誠実であろうとする愚直な姿勢。松山は静かなる情熱を叩きつけることで、岡田演じる財前の「動」の熱量と完璧なコントラストを描き出した。現場では互いにカメラが回っていない時間も役の距離感を保ち続け、あの張り詰めた空気感を維持していたという密着秘話も明かされている。
また、財前の愛人であり唯一の心の拠り所でもある花森ケイ子役を務めた沢尻エリカの演技も見逃せない。愛欲のドロドロとした関係を超え、財前の弱さや孤独を誰よりも理解する成熟した女性像を好演。バーの静寂の中で交わされる二人だけの会話シーンは、荒波のような権力闘争の中で唯一訪れる「嵐の前の静けさ」として、視聴者の心に強い印象を残した。