「異字同訓」のなかでも、日常表現において特に判断に迷うグレーゾーンが存在する。たとえば「危険水域をこえる」や「ハードルをこえる」といった抽象的な表現だ。これらは空間的イメージと数値的・概念的イメージのどちらを優先するかで表記が分かれることがある。
こうした迷いが生じる事例に対して、2026年現在の実務で有効なのが「置き換えテスト」だ。別の類語に言い換えられるかどうかを確かめる手法である。「超える」は「上回る」「突破する(数値を上回る)」と言い換えが可能であり、「越える」は「通過する」「またぐ」「渡る」と直すことができる。
例えば「ハードルをこえる」の場合、陸上競技の障害物を跳び越す身体的動作であれば「ハードルを越える」となり、困難な課題をクリアするという比喩的な文脈では「ハードルを超える」とも表現できる。文脈が描く心理的・空間的な焦点がどこにあるかを見極める視点が欠かせない。