日本の高齢化率は29.1%に達した。2025年には団塊世代が全員75歳以上となり、医療・介護需要は急増している。こうした社会背景の中で、従来型の施設ケアだけでは限界が見えてきた。
メディカル・リハビリホームくらら武蔵境が農園を開設したのは、入居者の生活の質を根本から見直すためだった。病院のような白い壁に囲まれた空間ではなく、土の匂いと太陽の光がある場所。そこには明確な目的がある。
園芸療法という言葉がある。植物を育てる活動を通じて、身体機能や精神状態の改善を図る手法だ。アメリカでは1970年代から体系化され、日本でも2000年代以降、医療・福祉分野で注目されてきた。くらら農園の取り組みは、この園芸療法の実践形態の一つと言える。
土を触る。種を蒔く。水をやる。こうした単純に見える動作が、実は複雑な認知機能と運動機能を必要とする。季節を感じ、成長を予測し、天候を判断する。農作業は全身を使う総合的なリハビリテーションなのだ。