私たちが日常で使う「文化」という日本語は、英語の「Culture(カルチャー)」の訳語として明治期に定着しました。このカルチャーの語源は、ラテン語で「土地を耕す」「手入れをする」を意味する「colere(コレレ)」に由来します。自然のままの荒れ地に手を加え、作物を育てる営みが転じて、人間の精神や社会を磨き育てること全般を指すようになりました。
学問的な文化の定義と意味を確立した代表例が、イギリスの文化人類学者エドワード・タイラーです。タイラーは1871年の著書『原始文化』において、文化を「人間が社会の構成員として獲得した知識、信仰、芸術、道徳、法律、慣習、その他の能力や習慣の複合的な全体」と定義しました。
文化人類学の視点から見ると、文化には決定的な特徴が2つあります。1つは「生まれつきの遺伝ではなく、社会の中で後天的に学習されるものであること」、もう1つは「個人の思いつきにとどまらず、集団内で共有・継承されること」です。言語、身振り手振り、食事の作法、善悪の判断基準に至るまで、人間が社会の中で身につけた振る舞いのすべてが文化に該当します。