リリエンベルグを語る上で絶対に外せない双璧が、看板商品の「ザッハトルテ」と、秋季限定で登場する「モンブラン」だ。
木箱に入ったザッハトルテにナイフを入れると、表面を覆うシャリッとした独特のグラズール(糖衣チョコ)が心地よい音を立てる。生地の間に薄く塗られた自家製アプリコットジャムの鮮烈な酸味が、カカオのほろ苦さと絶妙に交錯する。別売りの無糖生クリーム(ホイップしたての本場流)をたっぷりと添えて口に運べば、重厚でありながら驚くほど軽やかに喉を通り過ぎていく。デメル(DEMEL)のDNAを忠実に継承しつつ、日本人の舌に馴染むよう極限まで洗練された傑作だ。
一方、9月から10月にかけて登場するモンブランは、熊本や愛媛から届く採れたての和栗を惜しみなく使用。注文を受けてから絞り出される栗のペーストは、まるで栗そのものを頬張っているかのように瑞々しく芳醇だ。土台のサクサクとしたダックワーズ生地、軽やかな無糖シャンティとの三位一体は、全国のパティスリー業界関係者が視察に訪れるほどの完成度を誇る。