音楽業界の歴史を振り返っても、「ノーダウト」の世に出たプロセスは極めて異例かつ痛快なドラマに満ちています。当時、インディーズレーベルのラストラム・ミュージックエンタテインメントに所属していたOfficial髭男dismに対し、フジテレビの制作陣からドラマ『コンフィデンスマンJP』の主題歌オファーが舞い込んだのは2018年初頭のことでした。
月9ドラマの主題歌といえば、歴代の名だたるメジャーアーティストが担当してきたゴールデン枠です。未だメジャー契約すら結んでいなかったインディーズバンドの楽曲が主題歌に抜擢されたのは、月9の50年を超える歴史において史上初の快挙でした。
当時、ドラマのプロデューサー陣は「コンゲーム(信用詐欺)というエキサイティングで軽快な世界観を、型にはまらない新しい才能とともに表現したい」という確固たるビジョンを持っていました。ライブハウスシーンで口コミを広げていたヒゲダンのデモ音源を聴いたプロデューサーが、その圧倒的なメロディセンスとグルーヴ感に惚れ込み、異例の直談判へと発展した経緯が当時の音楽メディアの取材で明かされています。
さらに世間を驚かせたのが、そのリリース手法です。2018年4月11日、インディーズとしての集大成となるフルアルバム『エスカパレード』の発売日当日、タワーレコードをはじめとするCDショップの店頭に、告知なしでポニーキャニオンからのメジャーデビューシングル「ノーダウト」が突如陳列されました。「インディーズアルバムとメジャーデビューシングルを同日同時発売する」という前代未聞のサプライズは、SNSを中心に凄まじい反響を呼び、ヒゲダンという名を一気に全国区へと押し上げる決定打となったのです。