山田純嗣の作品を目にしたとき、観察者は一瞬の迷子になる。それは平面の絵画に見えながら、どこか奥深い空間の深度を湛えているからだ。彼の代名詞ともいえる制作工程は、他に類を見ない複雑な段階を踏む。
まず、西洋や東洋の歴史的名画を綿密に分析する。描かれた登場人物や背景の要素をペーパーフュギュアや模型として立体化し、緻密なジオラマ空間を構築する。次に、そのジオラマをカメラで撮影。得られた写真を感光性の銅版に移し替え、伝統的なエッチングや版画技法を用いて紙へと定着させる。
写真と銅版画の融合が生み出す「実在の揺らぎ」
単なる写真でもなく、単なる複製でもない。レンズを通した画角の歪みや光の照射、銅版の持つインクの重厚な質感が交錯する。三次元を二次元の絵画にし、それを再び三次元の空間模型に立ち上げ、最終的に二次元の版画へと還元する。この往還が生む独特の「違和感」こそが、観客の視覚体験を揺さぶる。