文字情報としての言葉を、生きた社会現象へと押し上げた最大の功労者の一人が、アニメ版で則巻アラレの声を担当した声優の小山茉美だ。彼女がマイク前で繰り出した高音のハツラツとしたトーン、絶妙なイントネーションが、「ばいちゃ」に決定的な命を吹き込んだ。
テレビアニメ『Dr.スランプ アラレちゃん』を制作した東映アニメーションは、原作の持つ躍動感を極彩色の映像世界で見事に具現化した。フジテレビ系列で放送された本作は、最高視聴率36.9%という驚異的な数値を記録。日本のアニメーション産業におけるエポックメイキングな作品となった。
水曜日の夜、小山茉美の声で響く「ばいちゃ!」を聞いてテレビを消し、翌朝の教室で級友に向かって「んちゃ!」と挨拶を交わす。それは1980年代の日本において、誰もが共有していた幸福な日常の儀礼だった。