かつては輸入物のグリュイエールとエメンタールを混ぜ合わせるのが常識だった。しかし現在、最前線のシェフたちが熱視線を送るのは、長野や北海道のマイクロデイルー(小規模乳業メーカー)が手がける国産クラフトチーズだ。数ヶ月間じっくりと熟成された国産チーズは、豊かな旨味と上品な酸味を併せ持つ。
「本場の味を模倣する段階はとうに過ぎた」と、都内の有名ビストロでシェフを務める佐藤氏は語る。甲州産の辛口白ワインや山梨の無農薬白ぶどうジュースをベースに、長野産ラクレットと熟成チェダーをブレンドする。完成するのは、驚くほど軽やかでありながら、後味に深いコクが残る至高の一鍋。スイスから訪れたデンマーク人ジャーナリストも「本国を超えた多様性と繊細さがある」と舌を巻く。