なぜこれほどまでに多くの男性が騙されたのか。犯罪心理学の観点から見れば、彼女は人間の認知の歪みを最大限に利用していた。人間は一度相手を信頼すると、その後の不都合な情報を無視しようとする「確証バイアス」が働く。木嶋はこの心理メカニズムを直感的に理解していた。徹底した受容態度で相手の自尊心をくすぐり、「この女性だけは自分を理解してくれる」と思わせた後に、巧妙な罠を仕掛けたのだ。
ジャーナリズムが追求してきたのは、単なる怪事件の真相にとどまらない。彼女の存在は、現代日本社会に潜む深刻な「孤独」と「承認欲求の飢餓」を鋭く照射した。男性たちが求めたのは肉体関係そのものというよりも、己の存在を全面的に認められる感覚だった。彼女はその欲望に完璧な答えを提供してみせることで、男性たちの理性を麻痺させたのである。