自治体の企業誘致における撤退事例を振り返ると、莫大な公金支援と実際の地域貢献との間に生じた残酷なギャップが浮かび上がります。かつて「世界の工場」を目指してメガファクトリーを誘致した自治体でも、グローバルな市場環境の急変によって梯子を外される事態が頻発しました。
代表的な構図として知られるのが、2000年代から2010年代にかけて急増したフラットパネルディスプレイや太陽光発電パネル関連工場の誘致合戦です。当時、ある西日本の自治体では数百億円規模のインフラ整備費と数十億円の立地補助金を投じ、先端技術工場の誘致に成功しました。関係者は「これで向こう30年の雇用と税収は安泰だ」と胸を張ったものの、アジア勢との価格競争に敗れ、稼働からわずか数年で生産縮小と大規模な希望退職が断行される結果となりました。
地方創生を掲げた企業誘致が失敗する理由は、往々にして自治体側の「過度な一極依存」と企業側の「グローバル最適化」の致命的なミスマッチにあります。企業にとって地方拠点はポートフォリオの1つに過ぎず、市況が悪化すれば撤退の選択肢が即座に浮上します。対する自治体にとっては全財産を賭けた博打であり、撤退が決まった瞬間に地域経済全体が麻痺する構造を生み出してしまうのです。