本村氏の闘いは、単にひとつの事件の判決を覆したにとどまらない。彼が流した血の涙は、2004年の「犯罪被害者等基本法」の成立、そして2008年に施行された「被害者参加制度」という、日本の法制度そのものを書き換える巨大なうねりを生み出した。今でこそ当たり前となった、遺族が法廷で被告人に直接質問し、量刑について意見を述べる権利は、彼らが切り拓いた血塗られた道の上に成り立っている。
だが、メディアが華々しく報じる「勝訴」や「制度改革」の裏で、本村氏が抱え続けた個人的な苦悩は計り知れない。新日本製鐵(現・日本製鉄)の会社員としての日常を維持しながら、週末ごとに全国を奔走し、法廷に通い詰める過酷な二重生活。世間からの過剰な視線と、「復讐に取り憑かれた男」という心ないバッシングにも晒された。彼は後に再婚し、新たな家族とともに新たな人生を歩み始めているが、失われた弥生さんと夕夏ちゃんへの祈りが消えることはない。
事件から長い歳月が流れた現在も、彼が遺した司法改革の足跡は色褪せるどころか、被害者支援のあり方を議論する上での揺るぎない原点として機能し続けている。法が人を救うのか、それとも法が人を傷つけるのか――本村氏が投げかけた問いは、今なお司法界の深部に突き刺さったままだ。