シュールストレミングが放つ異臭のレベルは、他の発酵食品と比べても桁違いです。臭気の強さを客観的に測定するアラバスター臭気指数(単位:Au)による測定データでは、日本の代表的な発酵食品である納豆(452 Au)やくさや(焼きたてで1267 Au)を遥かに凌駕する「8070 Au」という驚異的な数値を記録しています。
なぜここまで凄まじい悪臭が発生するのか。その最大の理由は、一般的な缶詰と異なり「缶詰にした後に加熱殺菌処理を行わない」という独自の製法にあります。春にバルト海で獲れた新鮮なバルトニシン(ストロミング)を薄い塩水に漬け、樽で一次発酵させた後、生のまま缶に密封します。
缶内には酸素がないため、嫌気性細菌である「ハロアナエロビウム(Haloanaerobium)」などの耐塩性細菌が繁殖を続けます。この菌が魚のタンパク質を分解する過程で、硫化水素(腐った卵の臭い)、酪酸(酸化した油や足の臭い)、プロピオン酸(刺激的な酸臭)、酢酸などの複合悪臭ガスを大量に生成します。缶の中で発酵が進行し続けるため、強烈なガスが圧縮状態で充満し、世界一と称される異臭が生まれるのです。