隆の里の相撲人生は、まさに苦難と忍耐の連続でした。青森県出身で名門・二子山部屋に入門したものの、同期の若三杉(後の2代若乃花)が早くから脚光を浴びる一方で、隆の里は出世争いで大きく水をあけられます。さらに追い打ちをかけたのが、力士にとって致命的とされる糖尿病の発症でした。
激しい口渇と急激な体重減少に襲われ、一時は力士生命の危機に立たされた隆の里。しかし、ここから驚異的な糖尿病克服のドラマが始まります。医師の綿密な指導のもと、徹底したカロリー計算による食事管理を導入し、当時としては極めて珍しかった本格的なウエイトトレーニングを敢行。筋骨隆々の肉体を作り上げ、ファンからは「ポパイ」の愛称でも親しまれました。
苦節十数年、病を飼い慣らしながら地道に番付を上げた隆の里は、1983年名古屋場所後に30歳で第59代横綱に昇進。遅咲きの苦労人が見せた泥臭い努力の結実が、当時社会現象となっていたドラマ『おしん』の境遇と重なり、「おしん横綱」として国民的な人気とリスペクトを集めることとなりました。