漢字で「破廉恥」と書くこの言葉のルーツは、古代中国の儒教思想にまで遡る。恥を知る心や清廉さを意味する「廉恥」を自ら打ち破る行為、すなわち「恥知らずで道徳に反するさま」を糾弾するための厳格な言葉だった。明治から大正、昭和初期にかけての新聞記事を見ても、破廉恥罪や破廉恥漢といった法規・道義違反の文脈で用いられており、そこにユーモアの余地は微塵もなかった。
潮目が劇的に変わったのは1960年代末期のことだ。重々しい道徳的告発の看板が引き剥がされ、若者たちが口にする「ちょっぴりエッチで悪戯っぽいいたずら」というポップなニュアンスへと大転換を遂げた。意味のインフレならぬ脱力化。言葉が本来背負っていた重圧をパロディとして解体した結果、ハレンチは若者カルチャーの合言葉として再定義されたのである。