ロンドンのコヴェント・ガーデンに鎮座するロイヤル・オペラ・ハウス。赤と金を基調とした息を呑むような大劇場の中心に、その席はある。チャールズ3世をはじめとする英国王室のメンバーが公式行事や私的な鑑賞で訪れる際、この専用ボックスは独自の輝きを放つ。
舞台芸術・劇場興行の歴史において、王室の庇護は劇場の生命線そのものだった。君主が劇場に姿を見せることは最大の賛辞であり、ボックス席は権力を可視化する舞台装置でもあったのだ。客席からは見えない専用のサロン「ロイヤル・リタイアリング・ルーム」が背後に直結しており、幕間にはプライベートな歓談や専属シェフによるカナッペが振る舞われる。歴史の重みと現代の上流社交が、いまも寸分狂わず息づいている。