関係者の証言録や断片的なメモから見えてくるのは、幼少期から積み重なった深い劣等感と、社会全体への執拗な恨みだ。幼い頃に両親が離婚し、親族に引き取られて育った環境の中で、男は常に周囲と比較され、見捨てられたという被害妄想を募らせていたとされる。社会問題ノンフィクションの領域でも長年議論されているように、長期のひきこもり状態がもたらす認知の歪みは、他者への共感能力を奪い去っていく。
なぜ何の罪もない児童たちが標的となったのか。捜査関係者の分析によれば、自己処罰と他者への復讐が混ざり合った「拡大自殺」の心理が強く働いていた可能性が指摘されている。恵まれた環境に見える私立校の児童たちへ向けられた理不尽な敵意は、自分自身の恵まれない生い立ちに対する歪んだ怨嗟の裏返しであったという見方は根強い。岩崎隆一という個人の内面で何が臨界点を超えさせたのか、その核心は今なお社会が向き合い続けるべき暗部である。