前田敦子の演技キャリアにおいて決定的な転機となったのが、廣木隆一監督による映画『さよなら歌舞伎町』だ。ラブホテルを舞台に交錯する男女の群像劇の中で、彼女は歌手を目指しながら焦燥感を抱く女性を熱演。ベッドシーンで見せた危うくも情熱的な肉体表現は、彼女の才能を決定づけた。ただ体を張るだけでなく、役に潜む人間の弱さや生々しさを見事に表現してみせたのだ。
続いて公開された『イニシエーション・ラブ』では、80年代の雰囲気を纏った小悪魔的なヒロインを演じ、世の男性たちを狂わせた。一見すると可憐な恋愛ドラマの体をなしながら、終盤で牙をむくセンセーショナルな展開。仕掛けられた罠の中で魅せた彼女のミステリアスな色香と演技力は、日本映画界における彼女の地位を確固たるものにした。