読者が最も引き込まれるのは、ゴーゴリが抱える「真の目的」の異様さです。なぜ彼は、これほど残虐非道なテロ行為を嬉々として行い、味方すらも混乱に陥れるのでしょうか。
ゴーゴリの根源的な行動原理は、「完全なる自由の獲得」にあります。彼は自分が犯す殺人に対して罪悪感や良心の呵責を感じる「常識的な心」を人一倍強く持っています。しかし、ゴーゴリにとって「道徳や同情、他者への愛着」といった人間的な感情こそが、自分を檻の中に閉じ込める鎖に他なりません。
「人間はみな洗脳された奴隷だ。神の作った道徳という檻の中で生きている」と語る彼は、罪悪感を感じるからこそ、あえて最も残虐な殺人を犯します。良心を自らの意志で踏みにじることで、世界を支配する脳のプログラム(本能や倫理観)に逆らい、真の自由を証明しようとしているのです。
「私は正気だ!」「私は鳥になりたいんだよ」と叫ぶゴーゴリの名言の数々は、単なる快楽殺人者のセリフではなく、自らの精神を極限まで追い詰める悲痛な魂の叫びでもあります。