インターネットの論壇や一部のインフルエンサーの間では、「クリアファイルなどただの文具業界の陰謀」「本質的でないマナーに縛られる日本の採用はおかしい」という、いわゆるクリアファイル不要説が定期的に支持を集めます。確かに、書類を形式だけで選別するような採用姿勢に対する批判には一理あります。
しかし、こうした不要論を真に受けて「裸の書類」を提出することには、現場目線における決定的な盲点が存在します。
大手物流網を介して運ばれる郵便物は、トラック輸送や配達員の配送バッグの中で激しい圧迫を受けます。雨天時の配達では、封筒の端から微量の水分が浸透することも珍しくありません。クリアファイルという防水・耐圧のシールドがない書類は、配達完了の時点で角が潰れ、インクが滲む物理的リスクに無防備に晒されます。
筆者が取材したITベンチャーの採用責任者は、次のように現場のリアルを語っています。
「書類のクリアファイルがあるかないかだけで不合格の判定を下すことは絶対にありません。しかし、ボロボロになった応募用紙を見ると、『大切な提出物を守る工夫ができなかったのか』という疑問が湧くのは否定できません。顧客への提案書や重要契約書を扱う現場で、同じような無防備さを露呈するのではないか、と心理的な懸念を抱いてしまうのです」(取材コメントより)
「形式マナーへの反発」と「実務上の危機回避」は峻別されなければなりません。クリアファイルは誰かの面子を保つための儀礼ではなく、自分の労力と熱意が詰まった書類を無傷で相手に届けるための合理的防護策です。