物語の根底にあるサスペンスは、「ハウルとカルシファーの間に結ばれた秘密の契約」をいかに解き明かし、破棄するかという点にあります。この契約の詳細は劇中終盤まで明かされませんが、セリフの随所に伏線が張り巡らされています。
かつて幼少期のハウルは、地上に落ちて死に瀕していた流れ星(カルシファー)を救うため、自身の「心臓」を差し出しました。これによりカルシファーは生命を得て強大な魔力を発揮できるようになり、ハウルは代償として強大な魔法の力を手に入れたものの、人間らしい心(感情の成熟や痛覚)を失いかけることになります。
「おいらの呪いを解いてくれたら、お前の呪いも解いてやる」とソフィーに持ちかけるカルシファーの言葉は、契約による束縛の苦しみから逃れたいという切実な叫びでした。カルシファーが消滅することはハウルの死を意味し、ハウルの死はカルシファーの消滅を意味するという完全な運命共同体であったからこそ、「おいら消えちゃうよ!」というセリフは単なる狂言ではなく、二人の生死を分ける警告音として機能していました。