キリンビールが広告塔としてタレントを選定する際、単なる「現在の人気度(フォロワー数や視聴率)」だけで決定されることはありません。広告代理店関係者やマーケティング担当者が明かす起用基準には、ビールという嗜好品ならではの明確な指標が存在します。
第一の条件は「圧倒的なシズル表現力と幸福感の伝達力」です。ビールCMにおける最大のミッションは、視聴者に「今すぐ喉を鳴らして飲みたい」と思わせる生理的欲求を喚起することにあります。口に含んだ瞬間の目の輝き、喉仏の動き、そして思わずこぼれる吐息。これらをわざとらしくなく、観る者に多幸感として届ける演技力と表情筋の豊かさが問われます。
第二の条件は「生活者に寄り添う清潔感とノイズのない好感度」です。家庭の食卓や気の置けない仲間との時間に寄り添う商品であるため、プライベートの生活感や清潔なイメージは不可欠です。歴代のポスターやテレビ映像を振り返っても、昭和のいかりや長介が見せた哀愁や、平成の石田ゆり子が見せた柔らかな笑顔など、時代ごとの「理想の隣人像」が選ばれ続けてきました。
さらに、クリエイティブを彩る音楽の存在もキャスティングと不可分です。東京スカパラダイスオーケストラによる躍動感あふれるホーンセクションや、淡麗グリーンラベルで見られたあいみょんやFukaseの弾き語りなど、音楽とタレントが一体となってブランドの世界観を構築する手法は、キリンビールの十八番と言えます。