賃貸住宅の退去時トラブルにおいて、最大のバイブルとなるのが国土交通省が取りまとめた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」だ。この指針では、建物や設備の損耗を「借主の故意・過失によるもの」と「通常の生活で生じるもの」に明確に切り分けている。
結論から言えば、一般的な画鋲やピンによって壁に開いた小さな穴は、通常の生活の範囲内である「通常損耗」および「経年劣化」とみなされる。つまり、ポスターやカレンダーを掲示するために画鋲を数箇所刺した程度であれば、その補修費用は毎月支払っている家賃に含まれていると解釈され、借主が退去時に原状回復費用を支払う義務はない。
それにもかかわらず、退去時の立ち会いで「壁紙に穴が開いているのでクロス全面張り替え費用として3万円いただきます」と平然と請求書を差し出す貸主や管理業者は後を絶たない。基準を正しく知らなければ、言われるがままにサインしてしまう危険性が常にある。