世間からは「凶暴な実行犯」と見なされていた李正則ですが、逮捕後に警察・検察が作成した120枚に及ぶ供述調書からは、角田美代子元被告との異様な力関係が浮き彫りになりました。
報道各社の取材や法廷証言によると、李正則は取り調べの中で「あのおばはん、ええ加減にせえよとずっと思っとった」と、美代子元被告に対する激しい憎悪と怨嗟の言葉を吐露しています。
屈強な体躯を持つ李正則でありながら、なぜ小柄な中年女性であった美代子元被告に逆らえなかったのか。そこには、暴力団組織の上下関係とは根本的に異なる、巧妙なマインドコントロールと共依存の罠が存在していました。
美代子元被告は、李正則の暴力団破門という弱みや金銭的困窮を徹底的に握り、時には贅沢な外食や高級品を与えて「お前を本当に心配しているのは私だけだ」と懐柔しました。しかし一度機嫌を損ねると、親族一同の前で何時間も罵声を浴びせ、精神的に徹底して追い詰めるという「アメとムチ」を日常的に繰り返したのです。
李正則自身も、美代子元被告の怒りの矛先が自分に向くことを極度に恐れていました。自分が標的になることを避けるため、指示された被害者に対してより苛烈な暴力を振るうという、凄惨な防衛心理が働いていたことが法廷で明らかにされています。