バードウォッチャーが春(5月)や秋(10月〜11月)の渡りのシーズンに最も色めき立つのが、アジア大陸から迷い込む迷鳥や、通過するだけの旅鳥との遭遇です。この限られた短期間において、キビタキに酷似した2大スターが登場します。
1. マミジロキビタキ:白い眉を持つ大陸からの貴客
ロシア極東や中国東北部で繁殖し、東南アジアへ渡るマミジロキビタキは、日本海側の島嶼部(石川県・舳倉島、山口県・見島、長崎県・対馬など)を中心に稀に飛来します。キビタキとほぼ同サイズで、下面の黄色や背の黒、翼の白斑、腰の黄色など全体の配色パターンは酷似しています。
しかし、決定的な違いは「眉斑の色」にあります。キビタキが鮮やかな黄色い眉斑を持つのに対し、マミジロキビタキの眉斑は完全な純白です。漆黒の顔に真っ白な一本のラインが走り、喉から腹にかけてはキビタキよりもさらに澄んだ鮮黄色が広がります。春の離島遠征や秋の日本海沿岸の松林などで「黄色いお腹で眉が白いキビタキ」を見かけた場合、それは千載一遇のマミジロキビタキである可能性が極めて高いといえます。
2. ムギマキ:秋の紅葉に溶け込むオレンジの旅人
秋の渡り期、山地の木々が色づく10月中旬から11月上旬にかけてのみ姿を見せるのがムギマキです。名草のツルマサキやカラスザンショウの実を求めて立ち寄ります。
ムギマキのオス成鳥は、喉から胸にかけて深い柿色(濃い赤橙色)に染まり、腹部は清潔感のある白色です。上面は黒く、目の後方だけに「短く太い白い眉斑」が入るのが極めて特徴的です。ジョウビタキとキビタキの配色を足して二で割ったような美麗な姿をしているため、秋の山道で遭遇した観察者が「キビタキの変色個体かジョウビタキの新種ではないか」と混乱するケースが毎年のように報告されます。