松たか子の実父は、歌舞伎界の巨木であり人間国宝でもある二代目松本白鷗だ。幼少期から父の背中を見て育った彼女にとって、伝統と革新が共存する環境はあまりにも日常的なものだった。父・白鷗は歌舞伎の舞台に留まらず、ミュージカル『ラ・マンチャの男』を半世紀以上にわたり主演し続けるなど、日本の演劇界に不滅の足跡を刻んだ人物である。
松たか子自身も10代の頃、歌舞伎座の舞台で初初しき姿を見せ、松竹株式会社が手掛ける大舞台で経験を積んだ。父から受け継いだ厳格なプロ意識と、表現者としての揺るぎない覚悟。それこそが、彼女が若くして大名門の看板に甘んじることなく、実力派女優としての確固たる地位を築き上げる原動力となった。