折尾駅を語る上で外せないのが、1895年(明治28年)に誕生した「日本初の鉄道立体交差」という歴史的背景です。当時、石炭輸送を担っていた筑豊興業鉄道(現在の筑豊本線)と九州鉄道(現在の鹿児島本線)が交差する地点として設計され、下層に筑豊本線、上層に鹿児島本線が交差する構造は、日本の近代産業化を支える象徴的な土木遺産でした。
しかし、長年の増改築により駅構内は極めて複雑化し、「折尾ラビリンス」と揶揄されるほどの複雑な乗り換え経路や、駅周辺の踏切による慢性的な交通渋滞が長年の都市課題となっていました。北九州市とJR九州が総事業費約600億円規模を投じて推進した「折尾地区総合整備事業」および連続立体交差事業により、鉄道の高架化と駅舎の統合が一挙に進められました。
2026年に供用開始された新駅舎本屋は、1916年(大正5年)に建設され親しまれた木造2階建て旧駅舎のレトロな外観デザインを忠実に復元しています。特徴的なマサード屋根や化粧梁、優美な円形窓の意匠を現代の防火・耐震基準に合わせて再現し、改札内コンコースには旧駅舎の部材や歴史を伝える展示スペースが常設されています。歴史的アイデンティティを守りながら最新のバリアフリー性能を獲得した好例として、鉄道ファンのみならず建築関係者からも極めて高い評価を集めています。
さらに、2026年3月のダイヤ改正に伴い、福北ゆたか線と鹿児島本線を直通する列車が発着していた別駅舎「鷹見口(旧短絡線ホーム)」が廃止され、すべての乗り場が高架駅舎本屋の改札内に完全集約されました。かつて改札外を数分歩く必要があった乗り換えは、コンコースのエスカレーターおよびエレベーターを介した同一構内でのスムーズな移動へと劇的に進化しています。