クラシカルな司令塔――いわゆる「ファンタジスタ」や「トップ下」が守備を免除され、ひらめきだけで勝負できた時代は完全に過去のものとなった。近年のサッカー戦術論における最大のトレンドは、ピッチの全エリアにおけるスペースの圧縮と、攻守の切れ目がないシームレスなトランジション(切り替え)の徹底だ。
ペップ・グアルディオラをはじめとする戦術家たちが導入したポジショナルプレーや5レーン理論、激しいゲーゲンプレッシングの浸透により、ボールを持った選手に与えられる判断時間はコンマ数秒単位まで削られた。守備時に一人でもプレッシングをサボれば、即座に数的優位を作られて自陣を崩される。現代のピッチにおいて、走れない・守れないファンタジスタを組み込む余裕はどこにも存在しない。
結果として、10番に求められるタスクは劇的に変容した。現在の10番は、中央に鎮座するパサーではなく、サイドからインサイドへ斜めに切り込むアタッカーであったり、中盤の底からゲームを組み立てつつ毎試合12km以上を走破するボックス・トゥ・ボックスのミッドフィールダーであったりする。時には最前線で激しいプレスを仕掛けながら偽9番(ファルソ・ヌエベ)として機能する万能性すら要求されるのだ。