佐藤浩市の真骨頂は、殺陣や所作に深い説得力が求められる時代劇と、人の心の機微を繊細に描くヒューマンドラマにある。刀一筋に生きる武士の覚悟を表現する一方で、日常の葛藤に悩む父親像をリアルに演じ分ける表現力は、他の追随を許さない。
こうした振れ幅の広い役作りを可能にしているのは、家庭という絶対的な安らぎの場が存在するからだ。役に深く没入し、精神的に追い込まれるような過酷な現場であっても、自宅に戻れば自分を取り戻せる環境がある。家庭を守り続ける妻の存在が、彼の演技表現をより一層高みへと押し上げているのだ。