笠原氏の歩みを語る上で、2012年の出来事は絶対に外せない。長年連れ添った妻の彩(あや)さんが、子宮頸がんのため39歳の若さで旅立った。「賛否両論」の営業が多忙を極める最中での出来事だった。残されたのは、まだ幼かった長女、次女、長男の3人の子どもたちだ。
途方に暮れるヒマなどなかった。毎朝5時に起きて弁当を作り、昼夜は厨房で包丁を握り、夜中に洗濯機を回す。過酷を極めるスケジュールの中でも、子どもたちの前では常に明るい父親であり続けた。「父親であり、母親でもある」。覚悟を決めた男の背中を、厨房のスタッフも子どもたちもずっと見つめていた。